哲学の池

ここは哲学な読みものが棲む池。 哲学・その他の科学・雑学について、わかりやすさを目標にして運営しているブログです。 知的好奇心を満たしたり、時間つぶしにどうぞ。

タグ:自然哲学

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はじめに

前回はソフィストが流行った古代ギリシャについての話でした。
相対主義が広まった時代、その時代に現れた哲学者ソクラテスについて今回は見ていきます。

神からのお告げ

ソクラテスの弟子がある日、神託所(神からのお告げを巫女を通して聞く場所)に向かい、神に問いかけました。

「ソクラテスよりも賢い人間はいますか?」

すると、巫女は神の答えを告げました。

「いいえ。ソクラテスよりも優れた賢者はいません。」

それを聞いた弟子は師匠のソクラテスのところへ行き、この話を伝えます。
しかし、ソクラテスは自分自身がそんなに物知りでもなく、賢いとは思ってはいなかったので、不思議な気持ちになりました。

そこでソクラテスは、世間で賢いと言われている人たちと問答を試しにしてみて、神のお告げを確かめようと決めました。

ソフィストとの問答

ソクラテスは堂々と民衆に話しているソフィストに近づいて、その話の内容を聞いてみました。

「弱者を救うことが国家にとって有益で、結果的に国民は幸せになる!」

というような語りを聞いたソクラテスは話の内容でわからない点があったため、ソフィストにその問いを投げかけました。そして、それにソフィストが答えると、さらに問いかけをし、また答えが出るとまたさらに問いかけをする、という事を繰り返しました。

このように問と答を繰り返して真理を求める行為を「問答法」と言います。
その問答は例えば下のような感じです。

  • あなたの言う正義とは何か?
  • 弱者を救うのが正義ならば、救われる弱者とは誰か?
  • 救うとは何か?
  • 救わなければどうなるのか?
  • 救わなければ国民は幸せになれないのか?
  • 幸せとは何か?
  • 弱者も国民だが、救うことで国民として幸せなのか?

ソクラテスはソフィストと問答しているうちに、ソフィストの話に矛盾が出てきていることに気づき、それを指摘しました。ソフィストは真理を知っていなかったが、それを知っているという形で話していたのです。
その様子を見ていた民衆はソフィストが本当は真理にもとづいた話をしていなかった、いわば詭弁家とも言える存在ということにハッと気づかされたのです。

そこでソクラテスは神のお告げの意味を理解しました。
ソフィストは「ある真理について自分は知らない」ということを知っていませんが、ソクラテスは「ある真理について自分は知らない」ということを知っている分だけ、真理を求める意味では賢く優っているのです。

無知の知

「それについて知らない」ことを知る。
これを「無知の知」と呼びます。

何を自分が知らないかを分かっていなければ、自分が何を知るべきかも分かりません。
したがって、無知の知というのは真理を追究するには不可欠なものです。

その後の哲学とそして科学の発展に、ソクラテスの真理を追究する姿勢は大きく影響したのです。

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はじめに

この世界は何からできているのだろう?

その疑問からアルケー(万物の根源)を探求した自然哲学が始まりました。

「ソフィスト」という職業はその後の時代、紀元前5世紀頃に現れました。
ソフィストとはどういう役割があったのか?
当時の時代背景もふくめて、見ていきましょう。

ソフィスト

古代ギリシャではソフィストが民衆に人気がありました。

ソフィストというのは職業教師のことであり、大金をもらって人々に「弁論術」を教える人です。その弁論術とは、雄弁に語り、相手を納得させる術です。

ここで重要なのは、ソフィストは真実を追求するよりも、いかにそれらしく語れるかを重視した相対主義者であったという事です。

相対主義とは?

絶対的なことに重きを置かないことです。
例えば「正義」について考えたとき

  • 弱者を助けることが正義だ
  • 弱者を助けると弱者のままで変わらないから、助けないことが正義だ

と、どちらにも捉えることができるので、その時々で自分が有利になるように主張を変えることができます。絶対的な意見を持たない、それが相対主義です。

人間は万物の尺度

ソフィストには有名な言葉があります。

「人間は万物の尺度である」

すべての事はそれをとらえる人によって違う
というソフィストの思想がよく出ている言葉です。

このようなソフィストに民衆は大金を払って、相手を丸め込み自分が議論で勝つ方法を教えてもらいました。

なぜソフィストが流行ったのか?  これには二つの要因が考えられます。

  1. 万物の根源は、長年かかってデモクリトスが原子であると推測したが、当時の科学技術ではそれを証明することはできなかった。その影響から人々は真理の追求から興味を失った。
  2. 当時のギリシャは男性が全員、政治に参加した時代で、雄弁に語り議論で勝ち、世論を導く事が尊敬される価値観があった。

真理は必要なく、いかにそれらしく話すのかが重要だ。
どうせ、人により感じ方は違うのだから、真理を求めても無駄だ。

かの有名な哲学者ソクラテスはこのような時代に現れました。

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このページについて

この世界は何からできているのか?

古代の哲学者たちが、この疑問についてどう考えたのかを順をおってこのサイトで書きました。
このページでは、それぞれの項目ページへのリンクと概要をまとめてあります。

この概要を読んでみて、もし興味が出てきたら、ぜひそれぞれの項目を読んで楽しんでください。

概要とリンク

古代の人々はこの世界はすべてが作っていると思っていました。

人類史上最初の哲学者が、神ではなくこの世界は「水」からできているのではないか? と神話から離れて、この世界の成り立ちに初めて問題提起をしました。

世界は「水」からできているという問題提起に対して、「火」からできているという哲学者もでてきます。

またある哲学者は「数」という概念がすべての物事に影響しているため、世界は「数」によってできていると考えました。

「水」「火」「数」
一体この世界は何から出来ているのか? と疑問が深まったところに、人間が目で見たり、触れたりできる「感覚」ではなく「理性」で真理を追究すべきと言う哲学者が現れました。

だんだんと世界に対する考察が深まってきました。
「水」「火」「土」「空気」の4つの根本的な要素から世界はできていて、それらが融合と分離をすることで世界はできている。という、まとまった考えをする哲学者も現れます。

世界を構成している根本的な要素があり、そして感覚ではなく理性でそれを追究した結果、古代の哲学者はついに「原子」がこの世界を作っている、という結論にたどりつきます。

エンペドクレスは万物は「水」「火」「土」「空気」の4つのリゾーマタ(根)からできているとしましたが、その考えをさらに進めたのが哲学者デモクリトスです。(紀元前5世紀頃)

デモクリトスは、万物がこれ以上分割できない究極に小さい物体「原子(アトム)」から構成されていると考えました。視覚や触覚などの感覚ではなく、理性を重視して万物の根源を追究し、ついにデモクリトスは最古の「原子論」にたどり着いたのです。

そしてその原子が存在するためには、何もない場所「空虚(ケノン)」が必要であるため、空虚もまた存在すると言いました。無という存在があるというのはデモクリトスの考え方の特徴のひとつです。

このようにデモクリトスは、万物の根源について「原子」と「空虚(無)の存在」という答えを出しました。

しかし、デモクリトスの原子の発想は、紀元前5世紀の当時の科学では検証できず、それを証明することはできませんでした。

原子の存在は、その後ジョン・ドルトンという学者が近代的な原子説を唱えたことをキッカケに、実際にその存在が証明されました。デモクリトスが考えた原子の証明は、彼の死後、およそ2000年以上の時を経て、実現されたのです。

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<アルケー(万物の根源)⑤ 〜パルメニデス〜

  • 「万物は変化する」(ヘラクレイトス)
  • 「万物は不変である」(パルメニデス)

アルケー(万物の根源)を求める哲学は2人の偉大な哲学者により、それぞれ反対の結論が出されました。
どちらが正しいのか? どちらが間違っているのか? これは今後の哲学の方向性を分ける問題でした。

そこにエンペドクレス(紀元前5世紀頃)という哲学者が現れ、この2つの相反する考えを融合させてみせました。

まず、エンペドクレスは万物は、「水」「火」「土」「空気」の4つのリゾーマタ(根)からできているとし、この4つのリゾーマタは新たにできることもなく、また無くなることもなく、不変だとしました。

そして、この4つのリゾーマタが「愛」による「引力」で結合したり、「憎しみ」による「排斥力」(離れる力)で分離したりすることで、人間が観察できる物事の変化が起きると考えました。

この考え方により、ヘラクレイトスの「万物は変化する」と、パルメニデスの「万物は不変である」という答えを矛盾なく融合し、昇華させることができたのです。

このエンペドクレスの考え方は画期的であり、以下の点が後の哲学に重要な影響を与えました。

  • 万物(物質)には、変わらない要素の根がある(現代でいうと元素
  • 根(元素)は引力と排斥力などの「力」により、結合・分離をする

これらは現代科学の理論にも通じる点がありますね。

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